129、ユーラシア大陸横断用のバイク選び

2021年現在でのユーラシア大陸横断用バイクを1台選んでみたい。

実はロシアと欧州のユーラシア大陸だけであれば、ほとんど未舗装路は走らないので、オンロードバイクをメインに考えることになる。ユーラシア大陸横断は思ったより速度が速く平均時速120キロを超すので大型車から選んだほうが危険も疲労も少ない。一日6時間以上雨の日も風の日も2ヶ月近く走り続けるので、姿勢がきついレプリカ系やスクリーンのないネイキッド系が除外され、乗車姿勢が楽なアドベンチャーバイクと呼ばれているものから選ぶことになる。アドベンチャーというからオフのイメージが強いが、その実はロングツーリングバイクと考えるとわかりやすい。シートが柔らかく、サスがよく動き、直進性がよく、足つきがよく、荷物がつめて、燃費のいいエンジンで壊れないバイクが大前提になる。できれば軽く安ければいうことない。各社これに近づけようとしているが、なぜかどれかひとつ犠牲になる。

シート高が870mmもあったり、価格が200万超えたり、重量が250キロ超えたり、運動性を上げるためかシートやサスが硬かったり、これさえ解決できれば最高のバイクになるのに残念という車種が多い。

 

そういった中で、いまのところユーラシア大陸横断バイクとして市販車でベストに一番近いのがヤマハのテネレ700だろう。エンジンはMT-07で定評のあるパラレルツイン。スタイルはオフロードアドベンチャーらしく手堅くまとまっている。このバイクならば、ユーラシア横断だけでなく、そのルートを起点とした世界中の道路の8割位は走れそうだ。ただテネレ700は電子制御をしないと言い切っているのが少々気にかかる。移動の大半を占めるオンロードでは電子制御されたバイクの方が安心感がある。

 

来年あたり出ると噂されているホンダのトランザルプが、噂通りNCのエンジンを使い750ccDCT200キロ以下、シート高800mm以下ならこれも有力な候補になるだろう。特にDCTが、超ロングツーリングでは威力を発揮する。さらにオプションでアクティブクルーズコントロール(ACC)がついてくれば、鬼に金棒だ。エンジンも車から持ってきたのだから電子制御も車のホンダセンシングから簡単に持ってこれそうな気がするのだが・・。欧州では、今でも古いトランザルプが現役で走っているのをよく見かける。新型が出たら欧州でも乗り換え需要が相当ありそう。

と書いていたら、こちらも23年発売でどうも新規パラレルツインらしい。単なる400Xの750版だとしたら候補から外れそう。

NC750Xは、新型2021年モデルになってエンジン、足回り共にかなり良くなった。特にDCTの出来はアフリカツインレベル。現行のNC750X DCTは先進国でのロングツーリングに最適解をだしたバイクだ。特に秀逸のデザインがタンクに隠された23Lもの秘密の小部屋。セキュリティは数あるバイクの中でもトップクラス。欲を言えばもう少し足回りをしなやかに動くように、前後のサスのグレードアップをしたい。

 

同じくホンダの400Xも最適解に近い。疲れの少ないスムーズでよく回るエンジン、最高速近くでも全くぶれない矢のような直進性と優秀なフェアリング、200キロ以下の車重、800ミリのシート高とほぼ完璧。海外で少しパワフルな500ccが出ているのでこちらを海外で買うのも手だろう。このエンジンは高回転までストレスなく回り、振動もほとんどないロングツーリングには最高のエンジンだ。残念ながらサスがバタバタしてチープなので他社品でアップグレードできれば数万キロも問題なくこなせるだろう。できればマイナーチェンジでMT-09の様なサスアップグレード版を出して欲しい。750に比べてエンジンが高回転までよく回るのでヨーロッパの山岳地帯に入ってから楽しそうなバイクだ。

400Xについて書いていたら足回りをアップデートした新型の噂が入ってきた。

旧作はフロントがポンポン跳ねる感じで気持ち悪いハンドリングだったのが、倒立フォークで解消されそう。アドベンチャーとして一級品になってきて嬉しい限り。ついでにステー共通のソフトパニアも作ってくれれば最高。

他にも輸入車では、BMWGSシリーズ、トライアンフ、KTMのアドベンチャーモデルが有力な候補になる。どれも魅力的なので乗り比べてみたが、167cmのシニアライダーには1000cc以上の旗艦モデルは残念ながら持て余す。巨大な馬に子供が乗せられた感じで、瞬時の危険を避けるのは到底無理なサイズと重量だった。ロシアの横断道路での動物の飛び出し、ハイウェイに突然現れる巨大な穴、強烈な風と大粒の雨の過酷な自然天候、欧州の滑りやすい石畳の路面、ガードレールのない山岳地帯など、これだけ大きい車体になると一度判断をミスったらそのまま大事故につながるような恐怖感を覚えてしまった。この大型アドベンチャーを自在に乗りこなす動画がこちら。https://www.youtube.com/watch?v=qmgQJjWeUH0 トライアルライダー恐るべし。

ではアドベンチャータイプでなく、ネイキッドからの横断車へのエントリーは可能だろうか。とりあえず後付でスクリーンやサイドパニアをつければ横断可能なのがこちらの車種。

カワサキ (Z650

十分なパワーがあり、足つきもよく、軽いZ650。運動性能が抜群なので、ヨーロッパに入ってからは鷹揚な走りのアドベンチャーより楽しそう。少し前傾姿勢なので、ハンドル部分をスペーサーで持ち上げると楽に走れる。意外なのは長時間座っていても痛くならない低反発ウレタン製のシート。ウィークポイントはアドベンチャータイプより少なくなる積載量。キャンプ用品を持たず、ヨーロッパの数ある有名アルプス・ワィンディングを存分に楽しみたい人ならZ650やMT-07はいい選択になるだろう。今僕が、欧州でバイクを買って乗るならば、間違いなくこのフルパニア、スクリーン付きのZ650を選んでスイスアルプスや北欧ツーリングに出かけてひと夏走りまくりそう。

250ccクラス)

 

250ccクラスはいろんな車種が選べる。ヤマハ・セローは数々の先輩たちが選んだ世界一周バイクとして有名。今年惜しまれながら生産中止になってしまったので、現時点ではホンダCRF250ラリーが選択肢になる。まだこの車種で横断した人はいないので狙い目かもしれない。CRF250ラリーの特筆すべきは楽に高速巡航できるエンジン。250ccオフロード車でここまで高速に強いバイクは見たことがない。オフロード中心の行程でテレネ700より小さいバイクが良ければCRF250ラリーをおすすめする。ただし積載量が極端に少ないのでセローで世界一周した先人達の荷物を参考にパッキングしたい。もうひとつの問題点はシート。3時間ほどで嫌になるくらいお尻が痛くなる。毎日6時間なんて絶対に無理なので、野口シートなどで改善してほしい。

250ccの問題点は欧州の高速道路が猛烈に速く、流れについていけないところにある。欧州では速い車種が優先で、小排気量の遅いバイクは邪魔者扱いになる。ビクビクしながら走るアウトバーンなどの高速道路をさけて一般道中心で走るならば、未舗装路も走れる19インチ・スポークホイール仕様のヴェスシス・ツアラーをおすすめする。欧州のオフロードは、日本の林道と違いしっかり整備されており、幅広く平坦で走りやすい。ヴェルシス・ツアラーは純正でエンジンガードやセンタースタンド、パニアケース、フォグランプ、リアキャリアが装着済みで、このまま旅に出れる装備になっているのもいい。

最短で横断したければ大型車を、大型車の1.5倍くらい時間があるなら250ccクラスをと、旅に使える時間で車種を選ぶのもいいかもしれない。残念ながら250ccクラスだと横断中に数百回も追い抜きされるのを覚悟しなければならない。1車線しか無い道路で、乗用車ならばまだしも、背後から迫りくる巨大トラックからの追い抜きは恐怖でしかない。反射シールや目立つヘルメット、蛍光ベストなどで背後からの視認性を高める工夫をして安全に横断してほしい。

ユーラシア大陸横断ルートは、最初から最後まで新東名の120キロ高速道路がつながっていると考えるとわかりやすい。120キロ巡航で1ヶ月間安全に走り続けるためにも最低でも400cc以上、できれば650cc以上の排気量から選んで交通の流れに乗って無事に最西端まで到達して欲しい。

 

ついにカワサキのド本命現る。

2021年のEICMAに出品されたカワサキ。ヴェルシス650。

中央アジア、アフリカ、南米など、オフがメインのエリアでは、テネレ700が最適解だと思うが、ロシア、ヨーロッパ、北米のオン中心のエリアではこのヴェルシス650が数あるアドベンチャーバイクの中でもベストチョイスだと思う。

数ヶ月に及ぶ超ロングツーリングに必要な装備は全て揃っており、なおかつ純正で装備されているのも安心感がある。

ピックアップしたバイクが、排気量が足りない、サイズが大きい、重い、脚付きが悪い、装備が足りない、価格が高い、荷物がつめない、コーナーリングが良くない、など、各車なにかが足りないところに悩んでいた車両選びがやっとこれで落ち着いた。

排気量(650cc)なら二人乗りでも余裕、倒立フォークにダブルブレーキ、よく回るエンジン、重量も軽く、脚付きも800mm、可動式スクリーン、USBとシガーソケットの2系統。スポットライト、ハンドガード、グリップヒーター、カラー液晶メーター、キー付きのフルパニア。すべて揃ってお手頃な価格。望んでいたものが全て叶ってさすがカワサキ。感服しました。ということで

来年は、「Versys 650」で旅に出る!に決定!!!