まさか日本から自分の車にバイクを積んで外国行きのフェリーに乗るとは・・
夢物語だと思っていた。
海外旅行はこれまでいろんな所に行ったけど、まさか自分がそんなことができる日が来るなんて信じられなかった。
旧式の狭いフェリーに外国人と一緒に乗り込んで移動していても実感はあんまりなかった。
どこへ連れて行かれるんだろう。迷子になった気分だった。
これから行くところや言葉や習慣などなにもわかっていないのに乗り込んでしまった自分に驚いていた。
僕の祖父は長男なのに実家の商売の手伝いをやめて、ブラジルへ単身渡っていった。
ブラジルで八百屋を営み、ある程度成功したが、大洪水で店がなくなり実家に舞い戻ったと母親から聞いた。
農家の三男坊ならわかるが、うまくいっていた商売を継がずになぜ遠いブラジルに行ったのか謎のままだったが、いざ自分が似たようなことを始めると遠い祖父の気持ちが理解できるような気がした。
初夏の夕日はキレイだった。沈むまでずっと眺めていた。
船内の蒸し暑い空気とフェリー独特の騒音を聞きながら眠りについた。